全国有料老人ホーム協会の「シルバー川柳」からの作品です。
「第8回シルバー川柳」入選作品 2008.09.04
今回の状況
前年に発覚した年金記録問題に加え、川柳募集直前直後の後期高齢者医療制度実施や改正道路交通法(もみじマークの義務化)施行は高齢者の意欲をくじくものだとして、70代を中心とする高齢者が声を爆発させた結果といえそうです。なお、応募者最年長は101歳の女性(前回は102歳の男性)、最年少は6歳の女児幼稚園生(前回は13歳の女子中学生)でした。性別では、前年までおよそ男性6:女性4の割合が続いていましたが、今回は女性が42.6%(前回39.5%)と応募比率を上げました。地域別では、全都道府県から応募がありましたが、大都市圏が上位を占めています。
毎年敬老の日に向け公募している「シルバー川柳」に、8回目の今回は8,840作品の応募があり、下記の20作品が入選しました。(敬称略・順不同)
1~10作品
■老人の記憶を試す特別便 | 藤澤 繁夫(男性/石川県/55歳/表具師) |
■九十を過ぎても気にする中国産 | 小川 喜洋(男性/東京都/67歳/アルバイト) |
■原油高免許を返すふんぎりに | 髙橋多美子(女性/北海道/47歳/主婦) |
■居れば邪魔出かけりゃ事故かと気を もませ | 福井アツ子(女性/北海道/77歳/主婦) |
■足腰を鍛えりゃ徘徊おそれられ | 和田 宏(男性/東京都/68歳/無職) |
■あの世ではお友達よと妻が言い | 藤本 明久(男性/石川県/64歳/広告事務所自営) |
■来世も一緒になろうと犬に言い | 延沢 好子(女性/神奈川県/56歳/パート) |
■七夕や夫の願ひをそっと見る | 田中 浅野(女性/京都府/84歳/無職) |
■人の字を真似て二人で支え合い | 松川 靖(男性/埼玉県/73歳/無職) |
■亡き妻と朝は分け合う健康茶 | 深谷 正雄(男性/神奈川県/89歳/無職) |
11~20作品
■ボールなげ孫にほめられちょっとてれ | 中林 和子(女性/東京都/71歳/主婦) |
■限界だ元号三つの齢計算 | 石川 昇(男性/東京都/55歳/銀行員) |
■遺言を書いた安堵で長生きし | 富澤 舜(男性/北海道/83歳/無職) |
■この墓も入居間近とよく磨く | 蓮見 博(男性/栃木県/56歳/無職) |
■若作りした日に席を譲られて | 佐藤 祐子(女性/千葉県/61歳/主婦) |
■混浴は足湯だったと友ぼやき | 徳江 和雄(男性/東京都/80歳/無職) |
■年寄りに渡る世間は罠ばかり | 松尾 軍治(男性/東京都/63歳/飾り職) |
■医院前紅葉マークの展示場 | 行村 照子(女性/山口県/77歳/農業) |
■補聴器をそっとはずして聞く小言 | 今井 貢二(男性/兵庫県/59歳/会社員) |
■食事会薬でしめておひらきに | 牟禮 丈夫(男性/京都府/79歳/無職) |
題材比率に垣間みる高齢者の関心事
総括すると、「“軽老”もはなはだしい。物価高騰のさなかに年金から保険料まで天引きされたのでは、見栄や見てくれなんかにかまっちゃいられない。負い目を笑い飛ばしている余裕もない。不足分を稼ぐため、老骨に鞭打って働き続けるしかない」、との怒りと悲鳴に聞こえます。
なお、最近の出来事・世相・流行を反映したキーワードとしては、「年金」が最も多く、次いで新登場の「後期高齢者(医療制度)」や「もみじマーク」が目立ちました。また、以前からあった「振り込め詐欺」や前年に登場した「メタボ」が根強く残っています。
これまでの作品
入選にとことんこだわる川柳の作り方 [ 阿部勲(川柳) ] 価格:1,540円 |